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吸機、つけるの。

気付いた時には口から言葉が漏れていた。聞かせるつもりもなかった独り言に、直ぐに反応したのは母だった。やつれた表情の中で、ギラギラと鋭い眼が此方をキッと睨む。

「それしかないでしょ!? 他に方法ないの!!」

手負いの獣が牙を剥くような激しさに気圧されて、俺は何も言えなかった。そして咄嗟に頷くこともできなかった。

母が本当に父を愛しているのなら、彼女の手は痩せ細った父親の指を握るために在るべきではない。腕に刺さった痛々しい点滴を引き抜き、口を覆う忌々しい呼吸機を引きちぎるために在るのだ。彼を愛しているのなら、その手で何もかも終わらせてやるべきだ。母の震える指でも、機械に生かされた脆弱な命は直ぐに手折ることができただろう。俺にはそう思えてならなかった。

同時に、そう思う自分が異常であることも分かっていた。

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