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やわき春暁の円環をいただく

倦怠渦まく午前四時

ジュークボックスを泳ぐいさな

アンコールは望まない

36度2分の純情

飛び散る鮮紅色に片目を閉じよ

青と白のベクトル

白紙のレクイエム

出さない手紙

黒鍵に散るは梔子の花

蛍火を包み込んで

人類史と誰がためのサルベイション

うるわしのユータナジー

無神論者は軽忽きょうこつな夢を見る

縹渺ひょうびょうたる独善的レクイエム

臨界点に臨むベランゾール

鳴らぬ電話はただの石

桃色は憂鬱に溺れて

拝啓 世界一馬鹿なあなたへ

遠くまぼろしは透けて

レゾンデートル、応答せよ

硝子越しの恋

終わらぬ復讐

酩酊を殺す毒

生命散らせよ

モラトリアムに心酔する

秒針は薄氷を刻めるか

Mr.サラマンダー、お迎えはまだですか

プルーストの栞

沈黙する深海魚

 

601~670

絡まり散らばる感傷を湛えてまばたく

運命の輪のなかで眠たげな

青褪めたシーツの中でしか生きられない

遣る瀬なくとめどなく何処にもいない

欠けてゆくからだに残された未知

目を瞑ると亡霊の足音が聴こえるはず

いつしか燃えるような双瞳を手放す

これは遠い日の面影を忘れた罰

交わらない累月のもとで擦り減っていく

ぬるい雨で心ごと冷めていくような

吐き気がするほど美しい夜だった

ぼんやりした刹那を均す手つき

お終いにするにはちょうどいい時間

おおよそすべての離別をなぞ解き

なにもかを燃える星の火で失ってしまう

心臓に憂いを帯びていて

泥にまみれてやさしいふり

ここはまだ最果ての匂いを知らない街

月あかりを記したメダイユ

少なくとも再生の火はまだ満ちない

ふたりぶんの淋しさで夜をくるむ

寄せては返す泡沫の果て

灰のなかから羽化する祈り

冷たく凍るゆうれいの息吹

縫合した夜と朝のあわい

この冬は眠ったままでもいいよ

夜の深いところは何色だろうか

手のひらでつつむ周波数

己の名前も知らぬまま生まれてしまった

やわらかく剥がれ落ちたしあわせ

ひなた雨を飲み干す背徳

一片ずつはがれ落ちる花曇

ありふれた机上論に傷をつける

歯型にまみれたちいさなビオトープ

混ぜこぜにけぶるしあわせの変異体

細胞を満たす海はまだ温い

無傷のまま発火する鉱石は夢うつつ

傷ひとつ濁らせるねむたげな夜更かし

泥まみれで戯れ紡いでねぶそく

凍りついたまま失くしたそんな致死

うつくしく奪われた涯てに焼き付いたまま

ねむりのあとの雲間でうちゅうの解をもとめる

絶え間なく滲みきったら醒めるような雨後

彼方から胸底に火をつける

ゆうれいに息吹を吹き込まれた最初の日

こんなふうに欠けていく季節を燻らせて

なにものかになれず満ち足りたかった

いにしえより流謫るたくのたましいを匿う火竜の巣よ

忘却の涯てにみちを殺めて病めるとき

心臓に刺さった棘を摘み取れずにいる

ささくれた花の色とならずの獣

まぶしい犀利さいりをなでるような手触り

とけかけた導火線のかんばせ

神様の指先は凍えたまま

透明で煮崩れそうなピリオド

綴じ紐がおもたげなおわかれの日

ぐずぐずに崩れゆく創世

水槽の中でぼんやりとひかっているもの

どこにでもある爪あとと不感症

ひと匙の白昼夢に触ってあげようか

紛れもないあらすじの壊死

ふやけて息もできない体温

逃避夜行には巡らない夜

溺れる月とインプリンティング

土足でほころぶ夜は色褪せてままならない

うつくしくもはしたない嘘つき

傷みやすい色水でゆびさきを染めた

どうしようもなく摩耗した雨と傷

ふたりのあいだに横たわる追憶

窒息しそうな形の石と微熱

 

501~600

静謐を忘れてもなお青し

夜明け前だけが虹彩の色を知っている

揺らめく叙情と花を踏むひと

まぶたの上の憧憬

繰り返す夜々のこと

背中あわせの感傷を花の名になぞらえる

三千世界でも謳わぬ鴉よ不退転に告ぐ

裸足のうらで春を踏む

灰のなかのあやふやな暗号ひとつ

ひとつまみの砂漠でひそひそする

花鎖をたどり奈落にくだってゆく

そのめた肌に刻まれた刹那を愛す

頭上にうずまく刻限の味気なさよ

花実も宿さず枯れていく

不可視の傷痕とくちづけ

ひび割れたまま名を呼ぶ

ふたつめの地獄で待っている

燃やす双眸

不変/誰もいない終着駅

普遍/欄干の冷めた歩道橋

褪色たいしょく、やさしさの欠けたピース

鮮色、潮が満ちゆく月の通り道

苛烈をとかす瞳のゆらぎ

にせものの花に埋もれて吐息は白く

黎明、あやなす槐夢かいむをのぞむ

混ざりあう嘯笛と星の生き死に

夜明けのタフタと六ペンスの星

やわらかな棘、ほつれる秘密

未だ咲かない白とかわいた眼

うつろな呼び声で引っ掻いてくれ

羽化すればいずれ灰になる運命さだめ

終幕はひび割れた春告はるつげにて

涸れない呪いあるいは青の手のひら

ならずの森でけだものの牙をとぐ

青き泥濘で言葉だましを苛んだ

わだかまる言の葉に茨を飾る

砂上の肋骨

この世のすべてのさよならだけを集めた銀幕

花隠しの骸に口づけうつろを呑む

世界で一番美しかった八月

いびつな残り火とおぼるる福音

若きほのおを燃やす幕間まくあい

かじかむ裸足はだしで星のかけらを転がした

あなたの一番うつくしい秘密をおしえて

ほどけない靴紐をたずさえたまま

なまぬるいナイフの切先をつつむ秘色ひそく

不定のかたちを翳すささやき

抒情詩にもなれない世紀

色相環のうちがわから考える

あどけない花の嵐のうらがわで指切りする

いくつもの電子の海でひたむきな噓だけを拾う

はじけるままに満ちないエピローグ

満月の夜に呼びあう鯨のしらべ

とおく最涯てで待っている

触れたら淡くさざめく横顔

あなたの奈落で降りつもる潜性

ねむらぬ寝台列車と夜光虫

つめたいままで青ざめていく名前

銀木犀の結晶をなでるような

夕べにはこの切っ先も崩れていく

殿しんがりを羽ばたくエチュード

はじまりの焦土であの日の体温を知る

行き止まりのかなたにて遠雷

白昼夢のくちびるは青めいた

ゆるやかな終幕にくちづけ

未明には眠ったままでいたい

その双眸にそそぐ不死の塵

未だ睥睨する鴉の正体はわからないまま

今宵はたおやかなるポルターガイスト

舌先に焼けつくさよならだけ

神も掌握できない篇章

ひび割れた音だけで創る地獄

白昼に囚われて焦げつく回路

満ち欠けと戯れる告解室

天秤に指を掛ける

薄明かりに純正を縫いとめて

彗星が朽ちていく呪い

柩の完成を夢みる脈拍

凍りのかかとで拍を踏む

嗜虐をささやく鏡の向こう

うつくしさでコーティングされた嫌悪

てのひらで白けたままの顕性

夜のあいだに変容する化け物

底なしにやわらかい暗がり

雨粒にまぜてもくるしい

枯れおちたらあまねく冷めていく

右目に閉じこめる藍

引き攣れを隠す下瞼

死に傾ぐ三分間

錆びつく呪いの溶解

かじかむ陶鬱を飼い慣らして

焦げつくサファイアの瞳

分解できないいくつかの音

魂の抗体

星屑にまみれた踵

最果てへほつれていく欠落

すべての透明のための唄

さみしさを食べて肥大していく憎悪

移ろい/虚ろい そして散っていくもの

秘密をすくう環指のつめたさ

 

401~500

あなたに口づける災いがありますように

うららかな浸水

怜悧さを月に忘れる

ざらざらの物語のまま

遠ざかる此岸の匂い

月蝕に憂う潮の満ち欠け

薫る恒星の狭間で

白濁の月を均す

皮下に刻む個体番号

わたしの胸に潜む異形

おぼつかない断絶、くずれていく

星と砂の可塑性をほどく裸の足

ただ眦をなぞるだけでいい

虹彩を思い出せないまなざし

この永遠の行く先を綴る

ねむたげな春をそそ

淡い明滅をゆるす

蜃気楼をかざす

はばたきの理論

あなたのいる地獄は博愛に欠くか

車窓に閉じこめた不夜の街

液化していく神話性

ざらつく悪意の隔壁

甘やかな不詳を飲みこんでいく

この世の地獄にまみれていく

まどろむ春の魔物

ばらばらの劣情は約分できない

獣性を殺してはいけない

まだ途上の半貴石がさんざめく

さりとて得難い思い出でもない

未明の裂け目にわだかまる

一等いびつでありたかった

機能不全のやさしさを未だ抱えたまま

まだ さいわいに会えていないのに

とどめを刺せない、贋物だから

一世紀忘れ去られた凍原

ちょっと窮屈な退化

混じりけのない黒曜のよどみ

こんなに冷たい幕間まくあいなら

死神ほど脆い気配はない

凍ったまま褪せていく季節

赤と黒のあわいに宿る腐食

あまねくふぞろいな喪失

ひたむきな悪夢をあげよう

壊れるままに青を宿していく

欠けたままのピースを飼っている

やさしさを取り零す片割れ

蒼茫とした災い

やがて死にゆく粒子の呪い

夕べのまどろみを熾す

虚栄の深度をはかる

不知火しらぬいから抽出するひかり

うつくしいものだけを真実にしていたい

醒めゆく夢のまたたき

燃え盛る天使を凝視みつめていた

傷口に活ける槿花きんか

さめざめとやわらかな嘘

まぼろしの剥片

翡翠を溶かした泡となる

決して壊れぬ言の葉

眩しさを忘れた黎明期

交じりあう星色の哲学

いさり火を食べてたゆたう

すべてを間違えてたどる子午線

欠けゆくエメラルドの塑造

白めき燃え滓になっていく

一挙手一投足にゆれる心

彩りを忘れ またたきを食む

不完全しか踊れぬパレード

緩衝液にとけゆく昔日

天国にも地獄にもなれない深淵

やがて失いゆく現世うつしよの彩度

死者の悲しみの証明

花冷えの朝にいだく凍土

またたきの隙間に散って精彩を欠く

何万年も失い続ける普遍

暗やみの温度に捧ぐ色あい

無知の軋轢に軋むこころ

繰り返す夜の願いでつくる結晶

星の火から紡ぐ代償

知らぬ間にくすんでいく明日

凍りの残り火

苛烈さを閉じ込めるひかり

しららかな不透明

正しさを失う砂礫にて三時

にせものの標石を落としていく

叶わないねがいだけでできた鎖

きみだけが知る楽園のありか

劣等、さざめき、紫水晶

かじかむ孤独の息づく処

やまない花嵐の渦中

月と花の揺りかご

しるしに惑う星鏡

不可視のひかりを織りなす不変

白々と添えない模倣

空白をささやく赤色

色を失う夜明けと光度

陰影の萌すさいはて

こわれた心の交点

飽和して散り散りになる運命さだめ

 

301~400

プルシアンブルーのくじら

えいえんの可塑性について考える

やがて朽ちゆく楽園のさが

終わらぬ春の創世記

芽吹かぬ種中の化学反応

水底みなぞこに沈む午後の書架

車窓に揺らめくあま色の月

あなたの呼気につづく花園

自由落下の恋情についての考察

羊群の夢遊病者

誰にも知られずひっそりと青褪めていく

この終幕は置き去りのまま何もない

憧憬に結ばれし旋律

いつかの奇譚に忘れ去られていく

消えない傷をつつむ花片

亡者だけが欲するひとしずく

傷痕の残る運命さだめには

不死だけが知る体温

ほんの数千年で収束していく一瞬

花に埋もれて死ぬ春の常夜

花茎を食む唇のいろ

引き攣れを包み込むひかり

赦しと罪状の落下速度

冷たい砂漠で惑う

えいえんを捧げる半夏生はんげしょう

樹氷の梢に いたましげに宿る静けさのかさ

闇の中に沈殿する音の重なり

海ぞこのように青々と透き通る標本室

いまだ神の粘土をその身に宿したまま

ためらいがちに歩みをとめた青い春を振り返る

わたしの静脈には死への羨望が流れている

ブルービロード・コースト

転輪上のマリア

乾涸びた金魚みたいに哀らしく

こんなにさびしい箱庭なら地獄がよかった

終着駅に忘れてきた言の葉

すり減りながら生きている僕らのこと

わたしの銀河は六ペンスの輝き

上手に口にできない七つのおと

きっと真夏とはぐれてしまったんだね

虫食いだらけの尾を引く流星

薄氷だけを食べて息づく詩篇

インスタント・ノスタルジィ

錆びれた心根を紡ぐ

二重露光の夜を縫いとめる

越冬すれど芽吹かず

枯れおちた恋心を手向けようか

終わりを予感した箱庭の夏

貴方のまたたきの色を教えて

泣くときまで崇高さを失わないなんて可哀想

星屑を拾う匙は消えてしまったらしい

形而上に宿る瑕疵かし

水溶性の心の破片が溶けのこる

鮮血の弾丸で撃ち抜いて

芥蒂かいたいは塵となりて

夜明けの名残りの腑分け

セピア色の明晰夢が実る

縺れて縋って独りきり

胡桃の殻みたいに硬い音を奏でるね

あなたに凭れて午睡に浸りたい

ソーダフロートひと掬いだけの甘さ

ここはあなたの選んだ断頭台

腐り落ちてもなお枯れて 誰にも悟られず燃え尽きていく

天使が落とした琥珀糖が流れ星なのね

あなたの言葉の輪郭に触れたい

踏みつけてもなお固く閉ざされて

翠雨に濡れし徒花のぐずついた眼差し

あなたがぼんやりしている合間に枯れてしまったよ

こんがり黄金色の虚栄心

万華鏡の向こう側の世界は逆さまか

三日も止まない五月雨と残留思念

濡れそぼつ墓標にハイドランジア

やさしさの原材料

夜の縫い目にそっと星屑を忍ばせる

花実も宿らない幾つかの過ち

夜と朝の隔壁に耳を澄ます

神さまも午睡の時間

つつましい瞬きの隙間

いびつな運命論を弄さないで

君の水晶体が最もうつくしい

口にする度色褪せていくもの

瞼の裏の暗やみ

午前三時、汽笛が鳴る

天使の輪が蛍光灯なんて知らなかった

あなたの腕の引力

夢の跡がまなじりに残る

彼の岸で鐘のは鳴るか

いつか君の声を思い出せなくその日まで

死滅回遊魚みたいに晩夏を生きたかった

一週間で消えてしまう引っかき傷なら

息継ぎが一等下手くそなんだね

冷たい指先を握らせて

偶像を後生大事に抱えてしまう人

人でなしなんて詰れたら良かったのにね

君の体温と同じ温度を探している

割れ物みたいに触れなくたって壊れないのに

孤独のない国では皆んな孤独

青の縁どりで蠱惑が色づく

季節がひと巡りするまで擦れないで

整うまで崩していて

 

201~300

灰色の空の続く先にあなたがいる

きっと戒めを忘れた人だから

心臓の滲む音を聴きとって

聖者に口なし

無貌のセレナーデ

なまくらな幸せを消費していくだけ

ぼくの中で泡になっていった紫水晶アメジストの言葉たち

置き去りにされた地獄より

ダンボール一箱分の幻想

崩れ去る明日をただ見ていた

何も生まれない楽園

最果てより汝を呼べり

冴えかかる銅鉄色の光で手袋を編む

あの河川敷で食べたポトフほど美味しいものを知らない

すみっこで起こるアポトーシス

消せないペンで名前を書いておいてね

いたづく太陽/稚拙な月

ためらいがちな救い

ささやかな創世

さんざめく虚像

稚拙なさよならが痛々しかった

寒さを理由にしても良いのなら

いびつな脈拍を手にとって

ひび入りの幸せをまだ捨てないで

独りよがりの虚構、犯行声明文

エントロピーの増大に任せてぐちゃぐちゃになっていく

永久凍土に閉ざされた夢

願い事の重さに耐えかねた星

無痛の苦しみを教えてあげる

排水溝に消えていったノイズたち

お伽噺よりロマンチックにエンディング

累月、白と翡翠のミルフィーユ

僕の恋は輝度マイナス120カンデラ

あなたがあなたでない世界

君の傷口に爪をたてる

腐敗臭の漂うこの恋に

神さまが留守の間に

有刺鉄線の向こうから差し出された手のひら

君への呪いを白い皿の上へ

優しい世界の絵空事

寂しさを全ての理由にしてしまいたいよ

奈落の底で孤独を分け合っている

そうして全てが黒になる

シナリオ通りなんてつまらないわ

月光の届かない深さまで

天使の輪を落としてきた

さよならは殊更ゆっくり言ってね

今は砂まみれの翼で飛びたい

君なしのロマンス・ストーリー

いずれ腐り落ちる花の盛り

銀貨六枚分の幸福

瞬きよりも早く落涙より遅く

40デニールくらいの強さの繋がり

逆さまの空をカラフルな傘が覆ってしまうよ

目を閉じているから手を引いて

なりそこないばかりが集う街

月になれないなら星のようなものになりたい

何もかも遅すぎた夜明けが来る

存分に狂っていこうぜ

死者の国が見つからない

錆びたカトラリーで掬う冷めた安らぎ

カラスの群がる肉塊に成り果てたくはない

揺りかごから墓場までが遠すぎる

猫の額で構わないから関心が欲しい

明滅するはミラーボールの心臓

かがり縫いで幸せを縫いつないで

君の言葉は難しすぎる、必要なたった二文字も言えないくせにね

歯形つきの言葉

雪でさえ腐敗を止められない

霜焼けみたいに貴方を蝕む痛みになりたい

夜と昼の哲学

皮下にひそむ悪意

春の海には海豚の祈りが満ちている

こんなに美しい青なのに

ここには黒い屍も白い墓もない

曇天に呪うあなたの不幸

死の揺りかごは天蓋つきらしい

寂しい嘘しかつけないひと

此処ではない何処かのこと

せめてもの子守唄が夜更けをやさしく包むとき

焦土にぽつり立ちすくむ水銀灯

古びた時計の滲んだ文字盤

絶望は少しだけ微笑みを浮かべている

二色刷りの運命論に驟雨しゅううが降りそそぐ

あなたの言葉に心震えなくなった感傷

冴えかかる月は上白糖でできている

まるでドーナツの穴みたいに

あなたの懺悔と後悔で生まれた黒い海

がらんどうの花瓶を人差し指で弾く

言葉が形になって降り立つかわたれ時

幸福の定義を唱える祝福

北斗七星のひしゃくで掬う青い心臓

ほろほろと煮崩れた忘れ形見

さざ波で作ったタフタのドレス

瓶の底に残った幸福を救えずにいる

どうか終わりをわたしに魅せてね

琥珀糖ひと欠片分の安寧

あなたの孤独を半分こにしてあげる

氷の炎をやどす人

言葉にならない感情を君は知っているか

 

101~200

あなたの選んだ奈落に着いていく

見慣れた筆跡を指先でなぞる

手のひらで粉々になった蝶みたいに

貴方のための罪と罰

僕が神さまになったらクリーム色の綿あめを空に浮かべるよ

あなたのディテールを瞼の下に閉じ込める

いつか優しくしてくれたらそれでいいよ

カフェオレに溶かしたちょっぴり苦い思い出

鈍色の牙を研いで待っている

花曇りの午後、あなたの眠たげな声

優しさの凍る国でそれでも慈しみたいと

崇高とか名声とかそういうもの全部置いていきたいよ

対岸の火があなたの瞳にやさしく揺らいでいたこと

此処に置いていきたいものは全て食べてしまった

君の左目に宿った光が木洩れ日の中で揺れていた

僕の秘密は一番星だけが知っている

錆びついた空色をひたむきに彩った

カラシナのように眠ったまま起こさないでね

無痛のディストピア

今際の春

泡沫的終末論に悪態をつく

幼気いたいけを殺し画一を得る

縫合痕に落涙

混成的エゴイズムの具現

遍在/偏在的レゾンデートル

試験的彼女の取扱説明書

忘れじのディストピア

変わらぬ日々を日常と言う

軋轢あつれきに目をつむって毒を撃て

君の輪郭を眼裏まなうらに閉じ込めたい

陰雨に濡れる侮蔑の眼

累卵なる午前三時、街角にて

余蘊ようんなく喰らい尽く

君の濁りなき虹彩に熱情を宿したい

慈愛をめて共存を奪え

けぶる煙雨に踪跡そうせきを濁す

君の猜疑に黙殺される

汝、甘言を忘るべからず

罪跡に白百合

炎天に

灼熱は与奪を許さない

残痕に爪を立てる

弾痕にくちづけ

蝟集いしゅうを散らし路地裏を駆ける

爾後じご、死んだように生きてきました

なびく星を射殺する

死体なら理不尽を享受せよ

双頭を担う

内股に噛み痕

無味乾燥の旬日じゅんじつを喰らう

玩弄がんろう者は黎明れいめいに遊ぶ

諦念と遊び退屈と踊る

幽天に昇る

食傷気味の倦厭けんえん

ワインレッドの絶望をかん

鮮烈の花色を

晩秋、死におくれのレクイエム

皓皓こうこうたる月が茜を殺す

群青に溺れる

純潔なる狂気

不浄なる呵責

自嘲に深紅を差す

今暁こんぎょうの別れ

加点式愛玩定法じょうほう

驟雨しゅううにかすむ有明ありあけの月

甘美なる獣欲を殺せ

払暁を呑む

吟詠する星屑たち

臙脂のマフラーを捨てられない

唐紅、純情に燃ゆ

偶発的密会のススメ

東雲しののめ沖天ちゅうてんする

秋陽の散る日

白く夕月ゆうづきのかかりたる

成層圏を夢見る羊は艱難かんなんを舐める

ジョン・ドゥは逍遥しょうようする

ベッドの下の私の怪物

水葬にすアストランティア

なぞなぞの残骸と悪夢を見る

牙を抜かれた遊星を胸のうちに飼っている

Cold Blooded

胸にいだくエルドラド

累加する子供じみた偏愛

エメラルドの瞳の魔物

心臓ひとつを分け合って生きてきたのね

冷たい唇に羨望の眼差しを

熱の箱

嗜虐の心得

虚飾の揺り籠

アクアマリンの憂い

上弦の蜜/上限の密

やっぱり触れたい、と彼は言った

くれないの雫

夢見心地なアプリコーゼ

明日を忘れたアラベスク

加速度的恋愛落下速度

仮想的密室殺人

喝采に一礼

渇望のデストルドー

蹴っ飛ばせよ情動のカスケード

 

001~100

オルタナティブ・シュプレヒコール

罪責感が口づける

飽食ぎみの晩餐

陽炎かげろうを食む

俺も来世で踊りたい

緩慢な五月雨

ためらう人差し指

薄明はくめいに溶ける

ミラーボールの心室

お前に優しく手折られたい

人の献身に胡座をかくな

色褪せない感情を教えてくれ

背中合わせの感傷を知る

カーテンコールは終わらない

愚直なあなたに愛されたい

今夜限りで他人になる

獣のような眼で見るな

一線を超えた先にお前がいる

このまま貴方だけを奪い去りたい

黒いネクタイは息が詰まる

愛する人の還る場所になりたい

ひと欠片でも重なる感情はあるか

不器用ながらに愛したかった

身代わりにでも使ってくれ

殴り愛でマウントをとれ

惚れたが負けとは言うけれど

あなたの血肉になる

耳障りな声で嗤って

シュレディンガーの恋心

寂しいこども

見えない楔

不釣り合いな感情

夜の匂い

迎えにおいで

38度の記憶

真白ましろい墓

噛みたい指

味気ない朝食

甘ったれたラブソングでも歌ってろ

戯言アレルギー

無益な妄想

できない約束

不完全な鼓動

隣で星を数えたい

キメラの恋

ロクデナシ2匹

柔い眼

愚者の愛

さよならは言わない

蜃気楼を踏む

憂鬱な食卓

子猫の眼

心臓を止めたい

皮肉屋の末路

空を泳ぐ魚

冷たい微笑

道化になって踊りたい

聴こえぬ心音

遮断機を降ろす

鱗粉を拭う

骨のダイヤモンド

終演そして開幕

置き去りの純情

飛んで火に入る

寂寥感が牙を剥く

鼻梁をなぞる

背骨をたどる

不格好な一人遊び

恋情を摘み取る

堕落と献身

消えない轍

馬鹿な男

汗ばむ薬指

黄昏に染まる

甘やかな過ち

自虐家と常套句

ガラスの心臓

累卵の縁

美しい共犯者

機械仕掛けの鼓動