Untitled

が最後に見た景色は……風を切る逆さの世界、雨に濡れたアスファルトのくすんだ色なんだろう。流れる景色に君は、二人で飛ばした紙飛行機を思い描いたりしたんだろうか。


高い夏の空に飛行機雲だけが一本、真直ぐに伸びていて、消え掛かった線を辿るように飛ばした紙飛行機が白く宙を切った。君の飛ばした小さな反抗分子は綺麗に軌跡を描いて16時の校庭を横切った。高台の学校という隔離された世界の、屋上に君臨するのは僕ら。校庭の向こうに広がる住宅街を尻目に空に消えて行くテスト用紙に手を振った。


休みが明けて教室の窓辺の席にはもう君の姿はなかった。────君が死んだ。青色を切り裂いた白い紙はベクトルを90°変えて、君の身体は13階のベランダから宙を切った。


僕に何にも教えてくれない君は死んで、

あの日から時間の止まった僕も死んで。

僕を親友だと言ってくれた君は死んで、

失って初めて好きを知った僕も死んで。


あの空に飛ばした僕らの反抗分子は白い切先で夏の青を切り裂いて、きっと君はその割れ目に落ちていったんだろう。だから、僕の飛ばす紙飛行機が君のより遠くに空を切ったら僕はその割れ目の向こう側に行ける気がする。そんな錯覚を覚えながら青色を裂くナイフを放った。

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