しろく焼き上げた春の軽さばかり思い出す

長すぎる不在は偏在証明も楽じゃない

しろく焼き上げた春の軽さばかり思い出す

渇いたままのまなこをまばたいたところで何もない

膨らまない記憶を必死に手繰り寄せども忘れていく

はらはらと花びらの散る小夜めいたアスファルトをにじる

仄白い鯨幕に孤独をつつんで素知らぬ顔をしている

もう声すら曖昧なら瞳の色もいずれ消えていく

たぶん狭い陶器に納まるだけの灰になって

音楽プレーヤーからはいつも同じBPM

しろく焼き上げた春の軽さばかり思い出す