不揃いな息をやさしく包む


風にさらわれて鳴るのは骨ばかり

透きとおる青の静脈に流れる春

この声のヘルツを蝕んでいく

剥落するかなしみ

砂上の花嵐で奪われた

不揃いな息をやさしく包む

光のかけらの散らばる標本室で

ひずんだ永遠でつたないハレーション

静謐に沈む部屋でひと匙の哀惜

この身に余る極彩のかたち

てのひらで踊る心や臓

四肢ある機能不全

醜さでできた獣の名をほしいまま

背骨に刻まれた個体番号が光る

名もなき鉤括弧ひとつ握り潰して

不揃いな息をやさしく包む