炭酸水にまつわる20題

はじける溌恋

淡く次第にほどけゆく

群青を忘れた泡沫の果て

シュワシュワ・ポルカドット

指先に残る甘い香り

やわらかく舌先を苛む

あえかに愛おしく

夏の靴音が舌を焦がす

煮崩れた潮騒

透きとおる硝子の虚

置き去りにされた夏の音色

からっぽの音が一等うつくしい

これが倖せの味かもしれないね

ぬるい甘水はベタついて僕の指を苛んだ

青春は美しい頭をかしげ僕の後ろに立っている

淡水色うすみずいろのレンズごしに僕らは碧羅へきらの天を見る

サイダーの瓶の硝子玉が世界で一番うつくしく見えたころ

しかたがないことだけ掻き集めて凍てつく冬の朝を懐かしんだ

仔猫のまえあしみたいに、愛らしくたわむれないで

泡色の街をぼくは目をつむったまま行き過ぎたい

炭酸水にまつわる20題

ポルカドット:水玉模様の一種でドットの大きさによって区分される。中間の大きさ