硝子のかけら

硝子よりも繊細な私の心臓

歪な部屋のかけら

青めき透きとおる花びら

白波に五色のさざれ

血で縁を染めた硝子のかけら

光のくさび

砕け散る安寧

硝子球に宿る音色

いたづく亀裂の心

混じりけのない暁の光芒こうぼうを閉じ込める

無彩色の劣情

標本棚の硝子が朝の穏やかな斜光を反射して静まり返ったへやをきらきらと照らしてみせた。

十年前に買い揃えたグラスはある日粉々に割れ、切れそうな糸の上を渡るようなこの泥濘で誤魔化し誤魔化し先送っていた終幕をうっすらと予感したこと。

床に飛び散る光沢つやめく破片の中で、あなたの瞳が泣き出す寸前のような不思議な揺れ方をした。

乱反射する六角形のへやで、移ろう極彩色の星鏡を身にまとう。

硝子のかけら

光芒こうぼう:一筋の光

星鏡:水に映った星