僕の頸椎には
梔子の種が埋まっている
僕は指先を曼珠沙華の色に染めて
物言わぬ彼の唇に一片の勿忘草を
僕の頸椎には梔子の種が埋まっている
わたしの脊椎は朱実の鎖で編んである
僕の骨を撒いた土から鈴蘭が芽吹くとき
彼の虹彩には金木犀の粒子が宿っている
わたしの皮下は柘榴の細胞でできている
彼女の髪に桃色の百日紅をひと房飾りたい
私の前頭葉は石楠花の花びらで構成される
彼女の海馬には鬱金香の球根が眠っている
彼の体躯はどこかに夾竹桃の花が咲いている
彼のハシバミ色の瞳には輝々と妖精の粉が映っている
わたしの喉の桜色の鱗、あなたに特別に触らせてあげる
きっと沈丁花の香りを孕んだ風が彼女をあの春の向こうに連れて行ってしまったんだろう
僕の頸椎には
曼珠沙華(まんじゅしゃげ):彼岸花。花言葉は「悲しき思い出」「あきらめ」「情熱」。
勿忘草(わすれなぐさ):花言葉は「真実の愛」「私を忘れないで」。
梔子:花言葉は「洗練」「優雅」。
朱実(あけび):花言葉は「唯一の恋」。
鈴蘭:花言葉は「純粋」「純潔」。
金木犀:花言葉は「気高い人」「謙虚」「真実」。
百日紅(さるすべり):花言葉は「潔白」「愛嬌」。
石楠花(しゃくなげ):花言葉は「威厳」「荘厳」「危険」。
鬱金香(チューリップ):花言葉は「博愛」。白色は「失われた愛(失恋)・新しい愛」。
夾竹桃(きょうちくとう):花言葉は「危険な愛」「用心」。
桜:花言葉は「純潔」「淡泊」。
沈丁花(じんちょうげ):花言葉は「不死」「不滅」「永遠」。