たった一つの名も棄てられやしない

きわどい渦中でつめたさに触れた

焼けた単眼を湛えて傾いでいく

みぎわにぬれる踝、花が咲く

化け物には罰さえ必要ない

駆け抜けろよ激情のはて

毛羽立つ悪意さえ美しい夜

みぎてには羽の根、花を踏む

かたどる心臓を携え錆びていく

たそがれの澱でぬくもりに掠めた

えいえんの数え方ひとつ重ならない

駆け抜けろよ激情のはて

みぎわ:汀

澱(よどみ)