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2021
4

私の知らない壊れ方をやめて

ヒビの仮面が外せない

どうせ最後は灰になるのだから

夜明けまで吼えていろ

脳漿をゆっくり掻き混ぜるような

「Hi, Goodbye!!」銃を構える

僕の望んだエンドロール

アダムの林檎を押し込んだ

私の知らない壊れ方をやめて

目が醒めるような群青

何も知らないままの子供でいたかったと

空を切る逆さの世界にさよなら

僕の知らない僕を知っている

ボーダーレス ・デイズ

それとなく膝を揃えて右目には劣等を籠めて

逆さまのランデブーで夜を弄する

通過点を等加速度でよぎりたい

暮れなずむ泥濘に沈む明星ほし

醜さをまとって焦燥に笑わないで

渇いたフィルムからグロテスクだけを抉り取る

美しい病だけを閉じ込めておきたいよ

君のなかの宇宙を紐解く

終末こそが美しければと君が言うから

永遠に答えの出ない命題を授けよう

まなうら、アラベスクは酷く脆く

エンディングは永遠とわにやって来ないで

鉄塔の頂からのぞむ地平線は何色か

狡猾に棘を隠して彼女は遊泳する

取り除けられた人参みたいにきっと捨てられるんだね

淋しさをそっと口ずさむだけだった

涅槃ねはんにひとり置き去りにされたみたい

  • アダムの林檎:喉ぼとけ
  • ボーダーレス 【borderless・英】:境界が薄れて存在しない様子。また、そのようになること
  • 涅槃(ねはん):ニルヴァーナ。一般にヒンドゥー教、ジャイナ教、仏教における概念であり、繰り返す再生の輪廻から解放された状態のこと
5

羽化を夢見て腐っていく蛹のように

たった二つのその手さえ持て余してしまうんだね

可哀そうにって今更言われても遅いよ

僕のお下がりでよければ罪責感をあげるよ

映画の半券を後生大事に取っておくとかそういうの

気化する幸福感に雲をつかむような

好きなところ:覚えたての横文字をすぐ使いたがるところとか

埋もれてしまった星々を数える

悪夢の見方を忘れてしまったのかい

明け方四時のパレード、またやってるね

めいめい骸をならべてほらご馳走だよ

四体四臓五腑くらいの

真白にうずもれやがてNになる

黄身を割ってから食べないでよ

葉脈のように侘しみを綴る

器用に流星を飛ばした少年

エメラルドグリーンの血清

人差し指で軽く心臓を突くように

羽化を夢見て腐っていく蛹のように

あなたの心が爛れる様を見ていた

蛾の鱗粉のようにあなたを痛がらせることしか出来ない

瞬く間に浚っておしまい

盤上で運命的な出会いをした

あなたはまだ空の青さを知らない

きっと真珠色の輝きをしていたのね

マリアナ海溝みたいな軋轢に澄まし顔がお上手

君の劇薬になって息絶えたい

君のせいで言葉の切っ先が鈍っていく

少なくとも正統派は絶対に君じゃない

美しい終わりより無様な続きが欲しかった

あなたの内側をすり抜ける風になりたい

君のまなざしに色が差すとき どこかで星がひとつ生まれた

6

腐爛の花園には誰も結べない

たぶん、おそらく、もしもだけを抱いていきたい

腐爛の花園には誰も結べない

せわしない明滅とかざす理論

あんなにいびつな贄ならば

コンクリートのざわめき、届かぬ祈り

あいにく持ち合わせの憐憫はわずかしかない

終焉に囚われたまま日が暮れる

この手綱の先にはきっと天使だった何かがいる

地獄の拡声器を通った声しか信じない

垂直のまま羽をひろげて落ちていく

いまだ魂の踊りを望むしらべ

荒涼たる心ばかりが雪解けを知っている

いずれ消えるために生まれてきただけだから

君のためだけに羽化した悪夢のはじまり

快楽の回路を育てる罪と罰

星の終幕にきっとふさわしい

凍えるほど愛おしい

粉々に散り去る刻限

燃ゆるの息吹

忘れたてのシーツに横たわる

深紅の蝋がすべて落ちるまで

情けないままで息をしていてよ

濡れ羽色のまぶた

この引き金は錆びている

浅薄なうらがわが透けている

銀と黒の対比

気の遠くなるような静寂しじまが邪魔だった

すべてを拭い去る口実

硝煙でさえ色めいているのに

すべての嘘が赤ならば

7

翼を失ってからの方が長い

寄せては返す無知の罪

隘路より宣戦を告げよ

無人の円卓

焦げつくばかりの正義なら

たった一つの罰を抱いていく

雨水で満ちていく階下

心もとなく傾いでいく飢え

首すじを晒してこいねがう

毎秒焼けていく呪詛

君のてのひらは熱すぎる

翼を失ってからの方が長い

最後の被写界は褪せていく赤だった

何者にもなれぬまま貴女の瞳を忘れていく

3:05 a.m. ふしだらな熱

エンドロールならさっき済ませたよ

ポラリスは掬ったスプーンから零れたんだね

きっとひるなかの一番星みたいに

夜な夜な銀色の詩篇を編んでいる

銀河の涯てまで堕ちていく

神さまのひと匙、夢灯夜

非現実にさらわれたまま帰れない

指さきで震えるような痛覚

地平線でばらばらになって戻れない

くらがりに熾す憎しみよ

テーブル上でひとりごつ幸福論

金色の夜に不幸せを演じる

正義と悪の境界線で言い訳だけが生ぬるい

なまあたたかいカタストロフィ

優しくないきらきらと忘却する虚飾

泥と砂にまみれて今夜は踊って

思慕の重さに耐えかねたまぼろし

8

ヴィナスの憂いた眼差しと欠けた右腕

ひと匙のジャムを紅茶に落としたような瞳

ヴィナスの憂いた眼差しと欠けた右腕

憎め すべてが黒になるまで

君への赤い呪いも擦り切れている

悪魔に至るまでの道程

幽界の最終列車に間に合わない

眩む群青の果てに重力の針を統べる

五線譜の上で掴まえて

光と闇に惑って眠れない

ドーナツの穴の向こう側でかくれんぼ

縷々として焦がれる黒のための嘘

こころの隅でとろかす骸の火

まがつ道化とどこにもいけない血の掟

この音は眩すぎる陰陽を赦す閃光

もぬけの昨日に本物を置いてきた

短い夜ばかりが唄う日曜に

余りある程のまやかしを食べてしまって悪い子ね

痕かたもなく粉々な感情も生きている

まがい物の薔薇をうつくしく名付ける

甘すぎるくちづけじゃお別れできない

星と夢の舞台ににせものの仮面はいらない

あやふやな一等星はいくつ堕ちるのか

終点でかがやきも廃れる死生

月蝕に祈って白骨は踊り続ける

からっぽのおもちゃ箱と心中未遂

ねむりの地獄じゃ意味も形もない

海のコラージュと雨降りの美術館

幾つもない苦楽を神様から盗んだ日

霧の街が眠っているあいだのアンモラル

歌わない火の海にも沈黙は救えない

あらゆる有象無象を切ってしまって地獄変

9

月長石の花びらを編んでつくった詩集

偽者ごっことオフィリアの噛み跡

化け物めいた名前と奪われたかった嘘つき

赤の夜には魂もじっとしていられない

薬指に纏う疎ましい硝煙

この身に流れている劇毒ともう半分

やさしすぎたあくびと怪物にも似た宗教

こうして最後まで朽ち落ちた火のはなし

偽の月も渇き切ってしまって腕の中

どこかで句読点を落としてきた真夜中

指と指で知らないふり、毒を盛る

子午線を泳ぐ悪夢はふたつある

月長石の花びらを編んでつくった詩集

あなたの心にはゆうれいが歩いているのね

悪辣なくちづけがなければ死にきれない

ライカよ、有限の火を燃やしておくれ

銀星のざわめきの果てで選ばれない

宇宙のさざなみをかざしつつ信じていたい

窒息気味のハッピーエンド

たましいの繭を壊せば救いはない

ぬるい空白で孤独の首切り

肺に孕んだリキュールにうとうとする

ワールズエンドの枕で夢うつつ

機械仕掛けの酸素で傷を埋めよう

ひまわりを燃やし尽くした葬列

絶対零度の申し子よ、いつかの終わりを食んでいけ

夢幻のひかりをつむぐ領土よ

三角形の終幕に縫いとめた純正

すがりつく厄災と星屑のバラード

鎖骨に啄む奇形の石膏

対岸の終焉で永遠になれる

10

星の火めぐりで渇くくちびる

電子の仮想死を夢みていた逃避行

重い臓器をたずさえて眠りのくに

白熱灯の名残を暗がりに溶かした

存在証明ができない子のおはなし

おしまいの炎でつつむミルクレープ

アンバランスも溶けて水平線になる

わるい夢もくべてしまって冥途のみやげ

星雲のかたちも知らない神であれ

脈々と抱かれる星の群れよ

常夜の泥をさらってかなしい偽りのまま

やわい湖底に沈んでしまって首枷の錆

呼吸器官につづる文学

決して汚されないともし火を掲げよ

喜劇を晒した策略の綻び

なないろの再上演には痣も消えない

欠けゆく人魚と右腕の枷

汚い現実を結んでも幾何学は実らない

傾げつつドッペルゲンガーの秤

星の火めぐりで渇くくちびる

夜の海と薄紫はくしのタフタ

星の自殺と擬態する渦

いつかの面影も聞こえぬまま愚者のうた

花冷えの王国で人形あそび

綺麗じゃない秘密も燃してしまえば灰の花

にせの咎人は血も黒い

1万マイルの涯てから星間飛行

唇音を忘れた深淵で眠りについた

完璧な劣情の戴冠式

命題を授けるみどりの帝都

月夜にきらめく翡翠の正体よ

何者にもなれる盲目の不可分体

11

足して二で割れば丁度いい星座

稚拙な銀河にくべるハレルヤ

錯乱を絞めるかいな白藍しらあいに染まる

脆弱な白磁の火照った肌質きじ

玩具がわりのアイロニーを踏み潰した

不幸の波紋と青色のワンルーム

劇場外に音をなした噂の尾鰭おびれ

けむりの残骸と冷たい血の巡り

謬見びゅうけんの孵化と瑪瑙のさなぎ

情熱の落下速度に似た白夜

星巡りの記憶のほころぶ鏡の向こう

過ぎ去った空虚な慟哭が恋しい

瘡蓋が耳ざわりな野望

愛憎劇の末には契約印も消えている

ゆめの質量とこぼれる白昼夢

愉快な宿命に駆り立てられた真実味

追憶する慈雨の滲んだあの夏に

綺羅の境界線に巣食っている翠眼

少年が落とした記憶の定理

傾国の薔薇ひとひらと普遍的考察

命短し首なしの夢は失落する

真珠を落とす音に答えが欲しかっただけ

廃都へたどる終電のラプソディー

こまぎれの絹絲で紡いではいけない

煮えたぎる残像が煩くて

白星のかんばせと漂白した体温

扉の向こうの遠雷と電話線

言霊を閉じ込めた便箋の頼りなさ

病気をまとって狂気のささめきごと

記憶の生き死には要らない

  • 謬見(びゅうけん):間違った見解
2

君のその双眸を殺してしまいたい

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

無題

君のその双眸を殺してしまいたい

不可逆的胎内回帰

華麗なる逃亡劇

甘美なる絶対零度の吐息

白昼夢を噛む

大きくなったら天使の輪が生えてくると信じていた

あたしの何もかも奪い去って

3

あなたの吐息の温度

憂妄に瞳をふさぐ

あなたの吐息の温度

金木犀の香りが付きまとう

飴色になった恋心が腐り落ちるまで

不甲斐ない僕の刹那的人生讃歌

君の吐く息だけ吸って生きていたい

最終回恐怖症の彼女

子供じみた願望とささやかな爪痕

塩気の足りないワンルーム

君の虹彩を濁らせてしまった、ごめんね

もう少しだけを一体何回繰り返すの

ほどける夕べの煌めき

寂寞の在処ありか

春雷に微酔ほろよい

3Dの妄想を頭の中で組み立てている

私の心臓ちゃんと飾っておいてよね

心の抽斗ひきだしに鍵かけた

科学者は僕を見て「これはもう駄目だ」と言った

シナモンをひとさじ入れたミルクティは優しさの味がする

ブランデーを少し入れたホットミルクは安らぎの味がする

六畳半のグルーミー

あたしの頭の中に住む魔物

きっと夢をパクリと一飲みにしてしまったのね

生まれた時から劣等生だったのあたし

私の心臓、仔猫を撫でるように可愛がってくださいな

この声に救いの意図はないよ

蜘蛛の糸は地獄に続いています

どぷん

君と共に永遠に在り続ける

告白の代わりに君に心電図を贈りたい

間違いを繰り返してここまで来た

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