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Next'212021
ひびわれた唇に透明な紅をひく
半透明のつま先と揺れる翠雨
波紋を寄せてそんな影踏み
おろしたての赤で街を行く
僕の血潮は砕ける灰の雨
実体のない最終列車で銀河を走る
指さきの硝煙も薄れてしまう
終点には七等星のくちづけ
宇宙のさざなみで忘れ物
安らかな重力と星の海
黒く濡れた枝の隙間/刃毀れひとつない眼
赤く燃える穂先で描く一線/されど遥かなる隔壁
金気を帯びて闇夜を切り裂く/襟足からしたたる雨
掻き抱けど欠け落ちていく/さらば愛すべき負け犬よ
孤狼、月に吼える/この血潮は嵐のように眠らない
絶え間なく五月雨も嘘をつく
未だ見ぬ翼の名残をたどる指
かそけく鼓動と乾いたインク
溶けてしまう名と吐息の温度
馴染めない骨で息をしている
静寂が耳を蝕んで残るのはせつなさだけ
めざめてから最初の音と橙の星屑
今際の森には凍傷も癒えるらしい
朝と夜の結び目に音は眠っている
花さえも拒むつめたい夜には
きわどい嘘もブルーライトで渇いていく
八月の最後の日とポルターガイスト
さざ波のかけらが点々と落ちていた
単眼の痛みをたずさえ週末の足音
不揃いの乖離と悪魔のくちづけ
振り向いたあの子の髪が風にさらわれた
記憶の中でしか会えない彼女と春の海
潮騒の吐息が瞳の水気を奪っていく
あの子の名前はかたちにできない音
裸の足裏を砂がさざめいていく
てんしさまは一週間の休暇中らしい
明け方に結んだままほどけない呪い
窓ガラスに描いた生まれなおし
片手間に手折られし薄命の青
転調するむらさきの幸福
薄明の雨音にとらわれたまま、棄てられやしない
祈らない夜ばかり数えたら大人になってしまった
冷ややかなまなざしにもスコールの爪痕
もう二度とかえらない靴音と水しぶき
ここからまどろみまでは程とおい
指の隙間から零れ落ちて口ずさむにはもう遅い
誰にも言わないでねって甘いひそひそ声
ちいさく容量法を刻んでおくからね
つめたさより速く胸裏に届くもの
爪先でつづる黎明の光輪
原稿用紙十枚を埋める懺悔を君に捧ぐ
Next'202020
L’âme qui s’est égarée dans un miroir(鏡の中の彷徨える魂)
向こう側で肥大していく醜い生きもの
ジャバウォックに宜しくどうぞ
指紋だらけのアイ・ラブ・ユー
残響のカレイドスコープ
姿見合せ
触れた手のひらの温もりが奪われていく。
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