青春は僕の足元に埋まっている

僕らがまだ誰でもなかった頃

青春は僕の足元に埋まっている

僕は反対側で待っていたんだ、友よ

思わず降りた今のが終電で馬鹿だった

あの頃の僕らきっと何にでもなれた

私たちは黎明の残夢に佇んでいた

ふたり季節をまなうらに綴って

クローゼットで舞った白銀しろがねの君

海鳴りは僕の手首の脈に続いている

脆いグラスの破片が足もとに散らばる

君の21グラムの正体を僕は知りたい

幸運は降り注ぐ塵のように過ぎ去った

碧羅へきらをまとった天使のレクイエム

いつか振り返ったときその歪さに気づいて

あやなすニューロンの末尾に不条理を添えて

がなる碧落へきらくを踏み抜けば 君は蒼茫に融けるだろう

真っ白い天使の翅は掲げたライターの火に赤々と燃える

かつて僕らにあった感情もベッドの下で弱り始めている

家賃9万のワンルームはガラス一枚で外界から隔絶された僕らの国だった

ガタンガタン、ガタタン、終電はうつつな誰かを乗せて今夜も家路を運んでいく

青春は僕の足元に埋まっている

残夢:目覚めても尚残る夢心地

碧羅(へきら):緑色のうすぎぬ

碧落(へきらく):青空。大空。碧空(へきくう)。遠く離れたところ

蒼茫:見渡すかぎり青々として広い様子