ふいに吐いた疑問のため息も冷めていく

いつかくらいは重なる幻影もあるだろう

千の言葉もこの胸にある氷は溶かせない

寄りそえない脊椎で火ばかり腐っていく

雪の下で灰色になった詩のように息づく

二度とは還らない間隙かんげきがこだまする別離

朽ち果てた大地にて千年彩る不香ふきょうの花よ

ほのひかる硝子の悪夢を探している日月

指さきを苛むちいさな凍傷みたいな言葉

蒼白く彷徨う獣もこと切れた無機となり

神さまが氷屑をばらまいたみたいな星々

白く吐いた息は僕らの頭上で混ざり合う

ひとつの夏のために透きとおる白痴ほど

百年かけた偏在をしてなだれ落ちる雪垂ゆきしずり

朽ち果てた大地にて千年彩る不香の花よ

不香(ふきょう)の花:雪の異名。匂いのしない花という意味。

雪垂(ゆきしずり):木の枝や軒先から雪が落ちること。また、その雪。