折れた秒針には一片の沈丁花を

等加速度的落下の終末に無彩色の夢を見る

コペルニクス的転回によれば絶望もまた喜劇のようで

浴槽には寄る辺ない倦怠とこぼれた灰が詰まっている

逸脱した自己愛の延長には超常的欠落を添えて

幽愁をはらむ日没の残光の中、僕は胸の前で指を組む

世界終末の日、僕はひとりバスタブで退廃に溺れたい

深層水のガラスの向こうで彼女は気圏を望む

おとを失ったカナリアは無声の挽歌レクイエムを謳う

煙を喫む仕草に紛れて気鬱を吐き出した

崩落する白き巨塔の上から彼女は地上に手を振った

孤独の底をすくう神の指に救済を求む嬌声を

ネオン咲くアスファルトに哀哭の雨が降る

滑稽な寂寞が部屋の隅で僕を睨んでいる

腐臭漂うわたしの肢体は成層圏を夢想する

僕だけを置いて回り続ける歯車に一滴の劇薬を

風が吹けばいずれアカシアの花があなたに宿る

夢遊病者は狭間の夢を見るか

私たちの愚かさと腐臭に充ちたこの部屋の一角で

錆色の寂寞をティースプーンで掻き混ぜる

鯨が波間で跳ねればこの地球ほしと木星は少し近づく

大嫌いな君の軽忽さに反吐を飲んだ

白々しい悲しみをまな板の上でこねくり回している

致命的欠落を抱えた私の行く末についての考察

深々と降り積もる侘しさにぼくは今夜も耳を塞いだ

「優しい人になりたかった」と呟くあなたの両眼をそっと塞ぎたい

セピア色の感傷は夕暮れの斜陽と一緒にやってくる

七十億の孤独が息づくこの星で

神の積木あそびで創られた世界で今日も寝起きする

うつつに囁く死が意識の深層から手招きしている

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コペルニクス的転回:発想法を根本的に変えることによって、物事の新しい局面が切り開かれること