弟は感情の欠如した無表情で、鏡台の母親の赤い口紅を1本ずつ折っていく。彼女の新しい若い恋人のために買い揃えられた口紅が一本、また一本と無惨な姿に変わっていき、結局母親に見つかって叱られ、バッグの化粧ポーチの折り忘れた赤いルージュが彼女の唇に塗られる。母親の口癖は「どうしてお前は兄のようになれないの。」
若い男と夜を過ごしに行く母親を玄関で見送り、目の前で閉まった扉を無言で見つめる弟。兄はそんな彼を背後から抱きすくめて「2人きりになっちゃった。お前の母さんは今夜もお前を守ってくれなかったね……」と、とびきり優しい声で囁く。