No.01

100 Titles

詩環の受肉もここらで産まれなおす

偽称する双眸をなぞる痛みすら

この世のすべての忘却をもうずっと磨耗と呼んでいた

ふしだらな色彩を撒いて道連れ

敬虔に縫い付けられたなれのはて

えんえんと降りそそぐ羊水の夢

まどろみを千切って失くしたものばかり

いつしかつぼみの輪郭もほつれたまま

失格を額に刻んで渇きも蠢いている

羽化の瞬間まで隠してあげる

黎明を手折るゆびさきに深遠の粒子をそそ

今際の詩圏にて草臥れるまで喧嘩しよう

セロハンひとひら隔てたような壊死

わたしたちの刻印を塗りつぶす凶兆

祈れどももう戻れない地獄を踏みつける

地上のどこかの白雨を遠近法で弄ぶ

明け透けに芽生える赤を哀れなんて

花のようなくちづけを脊椎に

生まれたばかりで土にも還れないまま死んでいく

あの世の胎動もかつては剥き出しだった

その眼差しの色もわからないまま名前を呼べない

鏡の向こうには地中の亡骸も踊っている

いつくしき墓場にて非在の証明を

腐敗する水晶体じゃ嘘は見抜けない

燦然と箔押しされた花嵐を游ぐ

遣る瀬なき聖なる始源

十字架の沈むうなぞこに人魚の棲み家

肉薄に死のナイフがむきだした

手すさびに空白の終止符を定義する

六等星のシナプスでも切り分けて

情動になずむあなたの頬に銃口を

八つ裂きの深部が解けたとき

残り火も尽きたからもうおやすみ

てのひらの上でなお枯れてあやふや

ひとつの幕切れをくゆる八月

叙事を冷めたまま分け合う花々

繰り返す耐えがたい苛烈を撒く

未読のまま踏み荒らす帝王学

灼けただれた聖書にも似た硬質

ひとりきりでも灰になるにはまだはやい

背中合わせでひとつになるために生まれてきた

自らをまろびでて嘯笛も遠ざかる

刺さったままの甘い棘とその可塑性

祈りをこめて福音の鐘も燃えている

逆鱗の噛みあとには気づかないふり

かなしい魔物を殺めるまで

聖者の戴冠

忘れ去られたらそこでおわり

粗悪なひかりを愛すことは二度とない

星食いの最期の火

きっと不規則な拍動が小指をさらってしまうんだね

はだかのふしあわせにも泣かなかった

あなたの指はいちばん美しい裁き

透徹の森よ、まよえる虚ろを捧ぐ

信仰を均す手つきもつめたいだけ

渦巻いて噎せかえる詩のなか

あの場所で壊して置き去りにされた

ばらばらに捲れてすらいない秘密のいろ

はだかの傷跡を知らないふり

寄る辺ない観測地にてひとり

隙だらけの踝に咲く傷

あなたの呪いが世界で一番美しかった

バウムクーヘンみたいに層になった死のこと

やわらかな息の根が交わる

眠らない神の五指の救済もなく

落とした記憶の輪を数えている

今ならあれがお別れだったってわかる

焼き尽くす凍りのひばな

羽化と呼ばれる蹂躙についての記録

ぐずぐずの影すら美しい

ひとりしずかに産声を上げていた

花の骨と呼ばう薬指のかたち

いにしえの獣たちの夜

瓦礫だらけの楽園の終わりを見ていた

双眸に火をつける

ひとみに映る災禍の影

永遠の結晶はまだどこにもない

傷だらけの歪じゃままならない

そそがれる音楽にくちづけるみたいに

てのひらの中で終わる栄光

痛みですら贖罪で終わるのに

有限の落下速度でもかぞえていて

つま先の発火点で非対称

ああ君がため手折った花床かな

蹂躙するみたいに奪ってそんな終わり方

額のしるしはそろそろ錆びついてしまう頃

花隠しの冬に約束を忘れてきた

甘えたな追憶もいつまで踊り続けるか

千年を捧げて信仰を刻む

きみのために銀の牙を磨いてきた

映日えいじつをくべても燃え尽きない

煙草の火を吹き消すみたいなスコール

あなたの影で息づく宇宙

幾つもない理由を並べたただけ

凍りの砂嵐/炎雷の海鳴り

花の一生、まぼろし、境界線

水脈に抱かれる月長石みたいに

欠けない月とたましいたちの踊り

終焉の光で織った稜威りょうい

老いてはやがて森羅の国がひらかれる

信仰を均す手つきもつめたいだけ

いつくしき:厳か

映日(えいじつ):白い光の帯が見える現象

稜威(りょうい):天子の威光

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